Q1.金属ガラスはアモルファスと違うのですか?
金属ガラスとアモルファスの構造は同じです。アモルファスも金属ガラスも非晶質構造(ランダム構造:溶融状態の金属が原子配列を変えないでそのまま凝固した状態の構造)材料です。アモルファス材料は常温から温度を上げていくとある温度で急に結晶金属に変化します。ところが、金属ガラスは急に結晶化せずに過冷却温度領域(一般的に融点の60%前後)を通過して結晶金属に変化します。常温状態では同じ構造を有するアモルファス合金も過冷却温度領域を持っているもの、持っていないもので金属ガラスとアモルファスを区別しています。
Q2.金属ガラスは透明なのですか?
残念ながら透明ではありません。ガラスという名の由来は、酸化物ガラス(通常の窓、コップなどの日常ガラス製品)と構造が同じランダム構造であるため、ガラスの構造を持つ金属という意味で金属ガラスという総称になったものと思います。金属ガラスは英語名でBulk Metal Glass(略してB.M.G 弊社社名)といいます。アメリカではliquid-metal(液体金属)という商品名がポピュラーです。液体金属というと映画「ターミネータ」に出てくる液体状のロボットを連想させます。
Q3.これまでの金属と何が違うのですか?
アモルファス構造になりますと結晶金属に比較していろいろな優れた特性を持つようになります。高強度、低ヤング率、高耐食性、転写性、磁気特性、X線透過などがあげられます。
反対に結晶金属に比較して導電性は高く、熱伝導性は低い値を示します。また、過冷却温度領域に近づくと酸化物ガラスと同様に軟化しますが、過冷却温度を超えると通常の結晶金属配列に戻るため金属ガラスの特性は全く失われます。過冷却温度領域は合金によって様々ですが、一般的に金属ガラスの融点の約60%程度の温度が過冷却温度開始点となりそこから30℃~100℃(合金種によって種々)の範囲が過冷却温度領域となります。
さらに、ほとんどの金属ガラスは塑性変形しません(伸びを示す金属ガラス合金はあります)。そのため弾性域を超えて破断荷重を迎えます。
Q4.どうやって金属ガラスをつくるのですか?
アモルファス材料を作製する方法と基本的に同じ方法となります。アモルファス合金を作製するには溶融している合金(組成を構成している原子がランダムに動き回っている状態)から急速に熱を奪い凝固させることでランダムな原子配列がそのまま固化します。その冷却速度は106℃/SECの短時間で大きな冷却が必要となります。小さな体積を持つ溶融物から急速に熱を奪う事でアモルファスが作製できます。従って形状は粉末や薄いリボンに限定されるのです。金属ガラスは組成探査などの研究開発によって100℃/SECの冷却速度でもアモルファス化する合金組成が発見されました。そのため従来では粉末やリボンなどの小片しか作製できなかったのですが、cm級の大きさでアモルファス構造を有する金属ガラスバルク材が作製可能となりました。その合金系の中でZr基、Pd基は20mmレベルのバルク材が作製可能です。
Q5.種類はどんなものがありますか?
これまで論文上では500種以上の金属ガラス合金組成が発見されています。しかしほとんどの合金組成は希少金属を含まなくては成形できない事、またほとんどの合金は形状が数mm程度の大きさまでが作製限界となっています。そのため工業的に実用化するにはコスト面において問題があります。しかし、それらの金属ガラス合金の中でも形成能が高いZr基Cu基、耐食性の高いNi基Fe基、磁気特性の高いFe基、比強度が高いAl基などが特性が高く、工業材料として期待されている金属ガラス合金と言えます。
Q6.機械加工はできるのでしょうか?
機械加工は可能です。特に大きなバルク材が鋳造できるZr基は機械加工により2次加工する事が出来ます。また、ワイヤーカット、研磨、研削などの加工が可能です。加工する際の注意点は素材の温度上昇に注意する事です。過冷却温度を超えた温度になりますと結晶化が始まります(Zr基では400℃以内)。充分な冷却(切削液、研削液)を行う事が重要です。また、硬度が比較的高い(Zr基HV550)ので切削は超硬バイトを使用する事をお勧めしております。ワイヤーカットの場合、切断面が高温となりますので切断面が結晶化している場合があります。カット後、表面を研磨する事で結晶表面を除去できます。
Q7.どのような用途に用いられていますか?
これまで商品化開発されているものをその特性と具体的用途に分けて下記に分類します。
①高強度・高硬度、②低ヤング率、③精密鋳造、④転写性、⑤耐食性、⑥磁気特性
金属ガラス特性 |
具体的開発商品 |
合金組成 |
① ② |
ゴルフクラブ、スプリング材 |
Zr基 |
① ② ③ |
圧力センサー、マイクロアクチュエータ、コリオリセンサー |
Ni基、Ti基 |
① ③ |
微細歯車 |
Ni基 |
① ③ ④ |
ケーシング |
Zr基 |
① ② |
ショットピーニング材 |
Fe基 |
① ② ③ |
微小ネジ |
Zr基、Ni基 |
① ⑤ |
ベアリングケース |
Ni基、Fe基 |
① ⑤ |
溶射材 |
Ni基、Fe基 |
⑥ |
磁性シート、ダストコア、ナノコンポジット磁石 |
Fe基 |
Q8.価格はどのくらいですか?
Zr基のサンプル単価をご参考までに記載します。
【丸棒】 φ2×40㎜ 12,000円 【板材】 W20×L40×t2 40,000円
φ4×40㎜ 15,000円 W30×L40×t4 80,000円
φ6×40㎜ 20,000円
他組成や寸法をご希望される場合はフォームからお問合せ下さい。
Q9.金属ガラスの使用環境に制限はありますか?
金属ガラスの特性が変化するのは高温環境下での使用です。それぞれの合金には過冷却温度があるため、その温度に近い環境下ではアモルファスが結晶化し始めます。過冷却温度は金属ガラスの合金によって相違しますが、おおよそ合金融点の60%前後となります。例えば、Zr基の場合400℃が過冷却温度となりますので、400℃以上の環境では使用できない事になります。